- Pointこの記事のポイント
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- 特別支援教育を実施する多様な学びの場
- 子どもたちの就学先の決定について
多様な学びの場
特別支援教育を実現するために、個別の教育的ニーズに応じて、通常の学級に加えて、通級による指導、特別支援学級、そして特別支援学校と多様な学びの場が必要です。
ここでは、3つの特別の学びの場「特別支援学校」「特別支援学級」「通級による指導」について、整理をしていきます。
- 特別支援学校
障害の程度が比較的重い子どもを対象に、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を行うとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする学校です。
特別支援学校は、これまで蓄積した専門的な知識や技能を生かして、地域の幼稚園、小・中学校、高等学校に対して、センター的機能といわれる指導内容や指導方法、支援の在り方などの助言や援助も行っています。 - 特別支援学級
障害の程度が軽度である児童生徒を対象に、小学校、中学校などに障害種別ごとに設置される少人数の学級です。特別支援学級では「特別の教育課程」を編成し、自立活動などの特別の指導を行います。 - 通級による指導
小学校、中学校、高等学校などで、通常の学級での学習や生活におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする児童生徒に対して、各教科等の授業は通常の学級で行いつつ、障害に応じた特別の指導を「通級指導教室」などとよばれる特別の場で行う指導形態をいいます。
通級による指導においても、「特別の教育課程」を編成して指導を行います。
通常の学級
文部科学省が2012年に行った調査によれば、小学校、中学校の通常の学級における、学習障害、注意欠陥多動性障害、高機能自閉症などの発達障害の可能性がある児童生徒は6.5%程度の在籍率となっています。
また、2007年4月1日の、文部科学省からの通知によると、
「特別支援教育は、これまでの特殊教育の対象の障害だけではなく、知的な遅れのない発達障害も含めて、特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍する全ての学校において実施されるものである」
とされています。
これらを踏まえると、小学校、中学校、高等学校などの通常の学級においても、特別な支援を必要としている児童生徒が在籍していることを前提とし、通常の教育課程において、これらの子どもたちの特性に配慮しつつ指導を行っていくことが求められています。
就学先の決定
さて、現在の就学先決定においては、たとえば、「障害のある児童生徒は特別支援学校に就学する」といったように、障害があるイコール特別の学びの場に就学する、という関係ではありません。
保護者や本人の希望を尊重し、本人の適切な教育の場を最大限に考えて、校内や自治体での「教育支援委員会」による総合的な判断で就学先が検討されます。
就学先の最終決定は、区市町村教育委員会の判断になりますが、就学してからも必要な教育相談は継続して行います。その上で、就学先の変更などは、入学前に決定された学びの場を固定的に捉えないことで転学なども含めて柔軟な対応が可能です。
そのためには、関係者が定期的に会議を開催し、個別の教育支援計画などを活用して児童生徒の実態を確認していくことが必要になります。
個別の教育支援計画については「個別の教育支援計画・個別の指導計画とは?」を参照してください。
■監修・著
廣瀬由美子(ひろせ・ゆみこ)
明星大学教育学部教授