Point
  • 通級による指導の開始から終了までの流れ
  • 年度途中での指導の開始や終了

通級による指導の開始から終了までの流れをまとめると、以下のようになります。
ここでは、「通級による指導の開始」「通級による指導の実施」「通級による指導の終了」の、それぞれの段階について、詳しく説明します。

「初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド」文部科学省(2020)より作成(一部変更)

通級による指導の開始まで

通級による指導は、通級による指導の必要が認められた場合に開始となり、年度途中でも通級の開始は可能です。

それでは、通級による指導の必要性はどのように判断するのでしょうか?


通級による指導の対象となる児童生徒は、通常の学級における適切な配慮や指導方法の工夫のみでは、学習したり、生活したりする上で難しさがあり、一部特別の指導が必要であると判断される場合です。

そのため、まずは、対象となる児童生徒の行動観察をしたり、必要な情報を収集したりして、実態を把握することから始め、通級による指導の必要性があるかどうかを校内委員会で検討します。

通級による指導の対象者の判断は、校内委員会のみならず、心理・教育・医学などの専門家からの意見も踏まえ、在籍校の校長が、当該児童生徒に特別の教育課程を編成するかを判断します。


この時、対象となる児童生徒の判断にあたっては障害の状態だけでなく、どこの学校で通級による指導を実施するか、他校に通う場合は移動に要する時間や方法など、総合的に考慮する必要があります。

そして、校内委員会などにおける検討によって、当該児童生徒の教育的ニーズを明らかにし、本人や保護者へのガイダンスを行い、合意形成を図ることも重要です。

また、教育委員会とも連携をとり、教育委員会が設置する教育支援委員会の意見も十分に考慮する必要があります。

これらを総合的に判断し、通級による指導の必要があると判断した場合、通級による指導を始めることになりますが、その開始の手続きは、通級指導教室が設置されている市区町村教育委員会によって決められています。詳しくは、勤務している自治体のホームページなどで確認してください。

通級による指導の実施

通級による指導では、障害による学習上又は生活上の困難の改善・克服を目的とした指導(自立活動に相当する内容)を児童生徒のニーズに応じて行います。

(詳しくは「自立活動」をご覧ください)


通級による指導を受けているすべての児童生徒には「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」を作成します。作成にあたっては、保護者の意見を十分に反映させながら、在籍学級の担任と通級による指導の担当教員が連携して作成します。

これらの計画は、指導・支援の記録としても活用できます。そして、通級による指導の担当教員と在籍学級の担任は、個別の指導計画に記述されている内容や指導の進捗状況について随時情報交換し、指導の効果が通常の学級でも波及することを目指します。

個別の教育支援計画と個別の指導計画は、P-D-C-Aサイクル(Plan-Do-Check-Action)、つまり、計画(Plan)を立てて実行(Do)し、評価(Check)を行い再実行(Action)することが基本的な考え方です。
対象となる児童生徒一人ひとりを意識的に観察し、通級による指導の目標や達成状況を確認し、実態に応じて計画を見直しながら、指導を行っていくことが大切です。

(詳しくは「個別の教育支援計画と個別の指導計画」をご覧ください)

通級による指導の終了

通級による指導の終了のプロセスも開始時と同様になります。

年度末には、保護者や在籍学級の担任と児童生徒の状況を確認し、本人とも相談した上で、通級による指導を継続するか、終了するかを児童生徒の在籍校の校内委員会で検討します。
そして、通級による指導により、障害による学習上又は生活上の困難が改善・克服され、通常の学級における授業のみで学習や生活が十分に可能であると判断された場合には、通級による指導を終了します。

他校通級の児童生徒については、在籍校に、次年度の通級による指導の必要性の有無について確認依頼します。


なお、通級による指導により、障害による学習上又は生活上の困難が改善・克服され,通常の学級における授業のみで学習や生活が十分に可能であると判断された場合は、年度途中であっても、通級による指導を終了することもあります

■監修・著
小林倫代(こばやし・みちよ)
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所名誉所員