Point
  • 特別支援学級とは?
  • 対象となる児童生徒
  • 特別支援学級の「特別の教育課程」とは?

特別支援学級とは?

特別支援学級とは、小・中学校に設置されている障害のある児童生徒を対象にした少人数の学級です。

自立活動や各教科等を合わせた指導など、障害による学習や生活の困難を克服するための特別の指導を、児童生徒のニーズに応じて行う特別の場になります。

特別支援学級にも学級担任が配属され、学校の中では通常の学級と同じ機能を持ちながら、特別の指導を行うことができるようになっています。


特別支援学級は通常の学級とは異なり、障害種別に学級が編制されます。
通常の学級は、例えば小学校では1年1組~6年3組といったように学年ごとに分かれ、各学級は同学年の児童生徒で構成されますが、障害種別に編制される特別支援学級では、学級に異学年の児童生徒が在籍することになります。

特別支援学級で推進されている「交流及び共同学習」は、特別支援学級に在籍する児童生徒が、通常の学級の児童生徒と一緒に必要な教科や行事などを行う形態で、それぞれの学年学級は「協力学級」「交流学級」などとよばれています。


対象となる児童生徒

特別支援学級の対象となるのは、以下の8つの障害者で、それぞれの障害種別に学級が編制されます。

  1. 弱視者
  2. 難聴者
  3. 知的障害者
  4. 肢体不自由者
  5. 病弱・身体虚弱者
  6. 言語障害者
  7. 情緒障害者
  8. 自閉症者

なお、情緒障害者と自閉症者については「自閉症・情緒障害特別支援学級」として一つの学級の在籍者として編制します。

ところで、障害のある児童生徒が、特別支援学級に在籍する対象となるか、という点については、何らかの判断基準があるのでしょうか?

文部科学省(2013)の「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)」では、特別支援学級の対象者を、「その者の障害の状態、その者の教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況、その他の事情を勘案して、特別支援学級において教育を受けることが適当であると認める者を対象」としています。

また、文部科学省(2021)の「障害のある子供の教育支援の手引」には、どの障害種に対しても対象者の詳細な判断基準が示されています。例として、知的障害特別支援学級の対象者の判断基準を見てみましょう。

知的障害特別支援学級の対象は,その年齢段階に標準的に要求される機能に比較して,他人との日常生活に使われる言葉を活用しての会話はほぼ可能であるが,抽象的な概念を使った会話などになると,その理解が困難な程度の者となる。

「障害のある子供の教育支援の手引」文部科学省(2021)より引用

上記の判断基準として示されていることは、以下の2点になります。

  1. 知的発達の遅滞があること
  2. 日常生活を送る上で一部援助が必要であり、社会生活の適応が困難な状態であること

つまり知的障害特別支援学級の対象者としては、①と②の両軸から判断することを意味しています。

このように、特別支援学級の対象となる児童生徒については、障害の有無だけではなく、その人の状態や校内・地域の体制などを総合的に検討し、判断していくことになります。

対象者の障害の程度や、各学級での指導については、本サイトの「障害種別の特別支援学級」を参照してください。

参考
:「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)」文部科学省(2013)
:「障害のある子供の教育支援の手引」文部科学省(2021)

特別の教育課程

小・中学校の通常の学級では、それぞれの学習指導要領を基準に各教育課程を編成しますが、特別支援学級においては、小・中学校の教育課程を基本としながら「特別の教育課程」を編成することが認められています(学校教育法施行規則第138条)。

それでは、特別支援学級で編成する「特別の教育課程」とは、一体どのような内容を意味しているのでしょうか?

ここでは、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説総則編の「特別支援学級における特別の教育課程」を以下に示します(中学校も同様)。

イ 特別支援学級において実施する特別の教育課程については,次のとおり編成するものとする。
(ア)障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るため,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章に示す自立活動を取り入れること。
(イ)児童の障害の程度や学級の実態等を考慮の上,各教科の目標や内容を下学年の教科の目標や内容に替えたり,各教科を,知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりするなどして,実態に応じた教育課程を編成すること。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説総則編 第3章第4節「児童の発達の支援」2「特別の配慮を必要とする児童への指導」(1)「障害のある児童などへの指導」 ②「特別支援学級における特別の教育課程」より引用

つまり、特別支援学級における「特別の教育課程」では、以下の3つのことを行うことを意味しています。

  1. 自立活動を取り入れること
  2. 当該学年はもちろんのこと下学年の各教科の目標や内容を取り入れることができること
  3. 知的障害特別支援学校の各教科で代替することができること

詳しくは、本サイトの「特別支援学級の特別の教育課程編成」を参照してください。

特別の教育課程の編成にあたって

教育課程の編成は児童生徒一人ひとりにするものではありません。ですから、特別支援学級においても、まずは「学級としての特別の教育課程」の編成を行うことになります。

しかし、特別支援学級には、同じ障害種であっても、異学年の児童生徒が混在して在籍していることから、実際の授業では、児童生徒一人ひとりの個別の指導計画を作成して展開することになります。

なお、具体的な特別の教育課程編成について、「知的障害特別支援学級」「自閉症・情緒障害特別支援学級」に、その具体例の説明をしていますので、合わせてお読みください。

■監修・著
廣瀬由美子(ひろせ・ゆみこ)
元 明星大学教育学部教授