Point
  • 特別支援学級の対象となる障害は種類
  • 特別支援学級の種類は7障害種

特別支援学級の在籍対象及び障害種

特別支援学級は、小・中学校に設置されている障害のある児童生徒を対象にした少人数の学級で、対象となる障害は種類(障害者)になります。

しかし、自閉症・情緒障害特別支援学級においては、自閉症者と情緒障害者という、原因や障害特性の異なる状態を示す2種類の障害のある児童生徒を対象にしています。

したがって、8障害者の児童生徒を対象に障害種の特別支援学級が設置されていることになります。

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ここでは、それぞれの障害種別の特別支援学級について、対象者の障害の程度や各学級での指導などについて紹介します。

なお、対象者の障害の程度については、文部科学省(2021)の「障害のある子供の教育支援の手引」から引用し、各学級での指導などについては、国立特別支援教育総合研究所(2020)の「特別支援教育の基礎・基本2020」の内容を参考にしています。

(1)弱視特別支援学級

対象者(障害の程度)

拡大鏡等の使用によっても通常の文字,図形等の視覚による認識が困難な程度のもの。

「障害のある子供の教育支援の手引」文部科学省(2021)より引用

弱視特別支援学級に在籍している児童生徒は、おおむね特別支援学校(視覚障害)に在籍する児童生徒より軽度の障害の程度になります。

視覚情報を認識する力(視機能)として視力や視野、光覚、色覚などもありますが、それらが単一あるいは複合的に劣ることで、対象の児童生徒はルーペなどで文字を拡大しても認識が困難なことが多く、通常の学級での学習や生活が困難な状態を示しています。

学級での主な指導

弱視特別支援学級においては、情報手段である読み書きの学習に関して負担の少ない環境を用意し、教科書やプリント類を拡大するなど本人の視覚活用状況に合わせて提示する必要があります。

また、拡大した文字とともにパソコンの音声読み上げソフトを活用するなど、ICT機器を適切に導入することが本人の負担軽減につながります。

自立活動の指導では、「心理的な安定」、「環境の把握」、「身体の動き」、「コミュニケーション」などが考えられます。

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(2)難聴特別支援学級

対象者(障害の程度)

補聴器等の使用によっても通常の話声を解することが困難な程度のもの。

「障害のある子供の教育支援の手引」文部科学省(2021)より引用

難聴特別支援学級に在籍する児童生徒は、聴覚の程度を聴力検査等によって把握しますが、軽度の聴覚障害(2040デシベル)だと、静かな環境で4~m離れた相手の話し声を何とか聞き取れるレベルです。したがって、にぎやかな場面では聞き返しが多くなるなど、本人にとって困難な状態を示します。

学級での主な指導

難聴特別支援学級での主な指導では、自立活動の指導において保有する聴覚の活用を促すことや、相手の口元を見て情報を得る読話の活用など、「環境の把握」や「コミュニケーション」に関する指導が中心となりますが、各児童生徒の実態に応じた指導をしていくことになります。

(3)知的障害特別支援学級

対象者(障害の程度)

知的発達の遅滞があり,他人との意思疎通に軽度の困難があり日常生活を営むのに一部援助が必要で,社会生活への適応が困難である程度のもの

「障害のある子供の教育支援の手引」文部科学省(2021)より引用

知的発達の程度を調べるには集団式の知能検査ではなく、あくまでも個別の知能検査や適応機能検査等の実施が必要になりますが、知的障害特別支援学級の対象者は、知的発達の程度と社会生活への適応状態から総合的に判断することになります。

具体的には、各種の検査結果や日常生活場面での観察などから、知的障害の児童生徒は、同年齢の児童生徒と比較して抽象的な概念を使用した学習が困難であったり、日常生活の中で複雑なコミュニケーションを理解することが難しかったりするなど、学習面や生活面において支援が必要な状況が想定されます。

学級での主な指導

知的障害特別支援学級での指導では、特別支援学校(知的障害)の学習指導要領を参考に実施しますが、特に各教科等を合わせた指導の「生活単元学習」や「日常生活の指導」など、教科と領域を合わせた指導の方法を取り入れる必要があります。

生活単元学習の具体例など詳しい内容については、本サイト「知的障害特別支援学級」を参照してください。

(4)肢体不自由特別支援学級

対象者(障害の程度)

補装具によっても歩行や筆記等日常生活における基本的な動作に軽度の困難がある程度のもの

「障害のある子供の教育支援の手引」文部科学省(2021)より引用

この「軽度の困難」とは、例えば筆記や歩行等の動作は可能であっても、速度や正確さ、持続性において、同年齢の児童生徒と比べて実用性が低い状態を示しています。

学級での主な指導

肢体不自由特別支援学級では、基本的な動作の困難さを軽減するために、自立活動によって「身体の動き」や「環境の把握」、「健康の保持」、さらには「コミュニケーション」など個々の実態に応じた指導が必要になります。

また、自立活動による指導は、学校生活全体や各教科の指導と密接に関連してきますので、全体的な指導効果を想定しながら個別の指導計画を作成することになります。

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(5)病弱・身体虚弱特別支援学級

対象者(障害の程度)

一 慢性の呼吸器疾患その他疾患の状態が持続的又は間欠的に医療又は生活の管理を必要とする程度のもの

二 身体虚弱の状態が持続的に生活の管理を必要とする程度のもの

「障害のある子供の教育支援の手引」文部科学省(2021)より引用

対象者は一に該当する場合と二に該当する場合になります。一は病弱の程度であり、二は身体虚弱の程度となります。

病弱教育の対象となる疾病は、気管支喘息、腎臓病、白血病、心臓病、糖尿病など様々ですが、近年ではアレルギー疾患や心身症、適応障害などの病気が増加しています。

 

病弱・身体虚弱特別支援学級は、入院中の児童生徒が病院内に設置された特別支援学級(「院内学級」の呼称)を使用する形態と、入院は必要ないが小中学校内に設置された特別支援学級を使用する形態の2つがあります。

どちらも、在籍児童生徒は医療などの管理や連携が必要となります。

学級での主な指導

病弱・身体虚弱特別支援学級では、特に自立活動の指導において、自身の病気や体調の自己管理をできるようにするため、病気や状態に関する正しい理解(過度な不安を感じないようにする等)とともに、学校生活での様々な活動に対する具体的な指導や、行動面・情緒面で安定が得られるような指導が必要となります。自立活動においては、「健康の保持」や「心理的な安定」、「身体の動き」などが考えられます。

(6)言語障害特別支援学級

対象者(障害の程度)

口蓋裂,構音器官のまひ等器質的又は機能的な構音障害のある者,吃音等話し言葉におけるリズムの障害のある者,話す,聞く等言語機能の基礎的事項に発達の遅れがある者,その他これに準じる者(これらの障害が主として他の障害に起因するものでない者に限る。)で,その程度が著しいもの。

「障害のある子供の教育支援の手引」文部科学省(2021)より引用

言語発達の遅れという状態は、知的発達の遅れがある幼児の段階や知的障害の児童生徒でもみられますが、言語障害特別支援学級に在籍する児童生徒においては、基本的には知的障害から起こる言語発達の問題ではなく、器質性や機能性の問題から引き起こされている状態を想定しています。

具体的には、構音障害は、口唇や舌、歯などの器官の構造や、それらの機能の異常が原因で生じます。また、吃音などは、構音障害やまひ等がなくても話そうとすると同じ音を繰り返したり、引き延ばしたりなど流暢に話ができない状態をさしています。

学級での主な指導

言語障害特別支援学級では、言語機能の基礎的な指導などを自立活動で行うとともに、特に国語科での指導などでは各教科の中でも丁寧な指導が必要になってきます。例えば、国語科における話す、読む活動では、対象児童生徒の言葉の意味や概念などの理解を確認しつつ、体験的な活動を取り入れるなど、自立活動との関連を意識して指導することが重要になります。

自立活動の指導では、「心理的な安定」、「環境の把握」、「コミュニケーション」などが考えられます。

(7)自閉症・情緒障害特別支援学級

対象者(障害の程度)

一 自閉症又はそれに類するもので,他人との意思疎通及び対人関係の形成が困難である程度のもの

二 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので,社会生活への適応が困難である程度のもの

「障害のある子供の教育支援の手引」文部科学省(2021)より引用

一の「自閉症又はそれに類するもの」とは、現在の医療的診断記述によるとASD(自閉スペクトラム症)に該当します。従前に現場で「アスペルガー障害」や「高機能自閉症」と呼ばれていた知的障害を伴わないASDから、知的障害のあるASDまでと幅広く捉えています。この特別支援学級に在籍する児童生徒は、自閉症の特性が顕著で学習や生活に支障をきたしている状態を想定しています。

また、二の「心理的な要因」が意味する状態は、選択性かん黙や神経症習癖(チック等)、長期化した不登校など、心理的な問題を背景に、状況に合わない心身の状態を自分の意思でコントロールできない状態が継続することを示しています。

自閉症・情緒障害特別支援学級では、対象者の規定が自閉症者と情緒障害者となっています。2つの障害(情緒障害は、障害というより情緒の不安定さなどの状態像を示す)は、原因も実態も異なりますが、特別支援教育の歴史を背景に現在のような位置付けになっています。

学級での主な指導

自閉症・情緒障害特別支援学級は、情緒障害の状態像が異なったり、自閉症の程度や知的障害を伴う自閉症者が混在していたりと、在籍者が多岐にわたる学級になります。

したがって、担任は在籍する児童生徒の実態把握を丁寧に行い、時には同じ状態を示す児童生徒をグループ化して自立活動の指導を行うなど、高い専門性が求められます。

そこで、その点を少しでも改善するために、例えば東京都では、自閉症・情緒障害特別支援学級の在籍対象者は「知的障害のない自閉症等の児童・生徒」と示していますので、特別支援学級の担任になった際は、ご自身の自治体の情報を得ることも必要です。

自立活動の指導においては、「心理的な安定」や「人間関係の形成」、「環境の把握」、「コミュニケーション」などが考えられます。

詳しくは、本サイト「自閉症・情緒障害特別支援学級」を参照してください。

参考:「自閉症・情緒障害特別支援学級の教育課程の在り方について」東京都教育委員会(2016)参照

■監修・著

廣瀬由美子(ひろせ・ゆみこ)

元 明星大学教育学部教授