- Pointこの記事のポイント
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- 通級による指導の3つの実施形態とは?
- 3つの実施形態の特徴やメリット、留意点とは?
通級による指導を受ける児童生徒は、通常の学級に在籍し、各教科の授業や給食などの学校生活の大部分を通常の学級で過ごしています。そして、週あるいは月に何時間かの通級による指導の時間のみ、通級指導教室に通うことになります。
(詳しくは「通級による指導とは? 」をご確認ください)
ここでは、通級による指導の実施形態について、説明していきます。
通級による指導の実施形態
通級による指導の実施形態には、以下の3つの形態があります。
- 自校通級
児童生徒が在籍する学校に通級指導教室が設置されており、その教室に通って指導を受ける形態
- 他校通級
児童生徒が在籍している学校に通級指導教室が設置されておらず、他の学校に設置されている通級指導教室に、週に何単位時間か定期的に通級して指導を受ける形態
- 巡回指導
通級による指導の担当教員が、該当する児童生徒のいる学校に赴き、場合によっては複数の学校を巡回して指導を行う形態
それぞれの実施形態の特徴やメリット、留意点について、詳しく見てみましょう。
自校通級
自校通級は、対象の児童生徒がほとんどの授業を通常の学級で受け、一部特別の指導を、在籍する学校(自校)に設置されている通級指導教室において受ける形態です。
メリット
- 通学している学校の中で一部の時間、特別の指導を受けることになるので、対象の児童生徒が通級する移動の負担が少なくなります。
- 対象の児童生徒やその保護者は、通級による指導の担当教員に日常的に相談しやすいと考えられます。
- 通級による指導の担当教員にとっては、対象の児童生徒の学級担任や教科担当との連携や、校内における共通理解が図られやすいと考えられます。
留意点
- 通級による指導を受けていることを周囲に知られたくない児童生徒にとっては、指導時間帯の設定を工夫するなど心理的な抵抗感や負担感への配慮が必要です。
他校通級
他校通級は、対象の児童生徒がほとんどの授業を通常の学級で受け、一部特別の指導を、在籍する学校とは別の学校(他校)に設置されている通級指導教室に定期的に通って受ける形態です。
この場合、対象の児童生徒が在籍する学校の校長が、他の学校で受けた授業を、在籍する学校の特別の教育課程に係る授業とみなすことができます(学校教育法施行規則第141条)。
メリット
- 通級指導教室が設置されていない学校に在籍していても、対象の児童生徒は通級による指導を受けることができます。
- 通級による指導を受けていることを周囲(自校の児童生徒)に知られたくない、という児童生徒の心理的な抵抗感に配慮しやすいと考えられます。
留意点
- 他校への移動時間は、通級による指導の時間に含むことはできないため、移動に要する時間が児童生徒にとって過度な負担にならないようにする必要があります。
- 他校に通うことになるので、児童生徒にとっては慣れない環境であったり、制服が異なったりすることなどによる心理的な抵抗感などへの配慮が必要です。
- 通級による指導の担当教員にとっては、対象の児童生徒が在籍する学校との間で情報共有が図れるよう、連携の工夫が必要になります。
- 学校間の移動に際し、保護者などの送迎が必要となります。
巡回指導
巡回指導は、通級による指導の担当教員が対象児童生徒の在籍する学校を訪問し、対象の児童生徒は在籍する学校(自校)において、通級指導教室で一部特別の指導を受ける実施形態です。
通級による指導の担当教員が、本務校以外の学校において通級による指導を行うことになります。したがって、該当教員に対して、各教育委員会は複数校兼務の発令を行ったり、非常勤講師の任命を行ったりして訪問先の学校における身分を明確にします。
メリット
- 通級指導教室が設置されていない学校に在籍していても、対象の児童生徒は自校で通級による指導を受けることができます。
- 担当教員が学校を訪問することから、対象の児童生徒の学校環境を把握しやすく、対象の児童生徒の学級担任や教科担当との連携や校内における共通理解が図られやすいと考えられます。
留意点
- 担当教員が学校間を移動するため、自校通級や他校通級に比べて担当できる児童生徒数が少なくなる可能性があります。
- 巡回指導をする担当教員の移動の負担を軽減するために、旅費の支給などについては計画的に行う必要があります。
■監修・著
小林倫代(こばやし・みちよ)
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所名誉所員