Point
  • 「通級による指導」の指導形態とは?
  • 1単位時間の授業の流れ
  • 合同活動について

通級による指導の指導形態

通級による指導では、障害による学習上又は生活上の困難の改善・克服を目的とした特別の指導(自立活動)が中心となるので、指導形態としては、個別指導が中心となります。

しかし、発達障害のある児童生徒の中には、集団活動への参加、コミュニケーション、対人関係などについて課題のあることも多いので、個別指導と小集団指導を適宜組み合わせて行い、教育効果を高めるようにします。


以下に示すような、個別指導と小集団指導のメリットを踏まえ、児童生徒の特性に応じた指導を行うようにしてください。

個別指導のメリット

  • 個々の児童生徒の特性に応じて課題設定や教材の準備が可能になります。例えば、鉄道の好きな児童生徒に対して鉄道に関連した内容での教材を作成することができます。
  • 児童生徒との関係性(信頼関係)を築きやすく、心理的な安定も図りやすくなります。
  • 児童生徒のその日の状態に合わせて、指導内容・方法を臨機応変に対応できます。
  • 児童生徒のペースに合わせて学習することができるため、知識や技能の習得にじっくりと取り組めます。例えば、学習障害(LD)のある児童生徒に計算の操作の手順を言語化、視覚化して指導することなどが考えられます。
  • 児童生徒にとって短時間で達成できる課題や取り組みやすい課題から始めることで、児童生徒が達成感を味わうことができます。

小集団指導のメリット

  • 個別指導で学んだスキルを小集団の中で実践し、定着を図ることができます。
  • 集団参加を意識した指導ができ、児童生徒は友達とともに活動する楽しさを味わうことができます。
  • 児童生徒同士の関わりから、人間関係や対人関係を学ぶことができます。
  • 集団のルールや決まりなどを設定して、それを守る経験を積むことができます。
  • 共同制作などを取り入れることで、児童生徒同士で話し合ったり、モデル(見本)になったりすることができます。
  • 異年齢で集団を編成することで、リーダーシップを発揮したり、責任感を育てたりすることができます。

1単位時間の授業の流れ

通級による指導は、その特徴として、「限られた時間における指導」が挙げられます。また、日常の学校生活の様子を把握しにくい「他校から通級してくる児童生徒の指導」をすることもあります。

短時間、個別指導が中心という特徴がある中で,指導効果を高めていくには,1単位時間(40~50分程度)の指導をどのように組み立てていくのかが重要になります(他校通級の児童や中学生の場合は,2単位時間を続けて指導する場合もみられます)。


以下の例は、宮城県総合教育センターが提案している「通級指導教室サポートパック-中学校における通級による指導の充実を目指して-」(P32)に紹介されている授業展開例です。

1単位時間の指導では、本時のめあてを明確にし、それに即した活動を展開し、最後に学習の振り返りをして、次の通級による指導の時間、ひいては通常の学級での時間につなげていくことが大事です。

通級による指導の中での合同活動

通級による指導の中で、複数の児童生徒と合同で活動を行うことで、それぞれにとっての教育効果が高まることが期待できます


ここでは、小学3年生で、読むことに困難がある児童Aに対して、個別の指導室で読む活動を中心に指導を展開し、指導の最後の活動で、同じ時間に指導を受けている、衝動的な行動を起こすことが多い児童Bと合同で、プレイルームでかるた遊びをする活動を紹介します。

合同活動では、児童Bと「かるた」を行うことで、児童Aにとって、遊びの中でも文字に多く触れ、読む力がつくことが期待されます。同時に、同学年の児童生徒と会話を楽しんだり、競い合ったりすることで自己表現することも学ぶことができます。児童Bにとってもルールを学ぶことや話を聞く集中力を高めることにつながっていきます。


個別指導では、教師と児童生徒(大人と子ども)という関係の中で活動するので、対等なやりとりにはなりません。同学年の児童生徒同士の活動では、相手の思いを理解したり、自分の気持ちを伝えたり、自分の思い通りにならない状況の対処方法を考えたり、対人関係の中で起きる様々な問題を解決する力をつけていくことになります。複数の児童生徒と合同で活動することにより、ソーシャルスキルを高めていくことにつながると考えられます。


また、通級による指導の中で合同活動を行う場合は、

  • それぞれの児童生徒の相性を見極めること
  • 通級による指導の時間帯を決める際にそれぞれの時間を合わせておくこと
  • 授業の前に複数の通級による指導の担当教員が、どんな活動なら一緒に行えるのか、それぞれの児童生徒の特徴や指導目標を踏まえた活動について打ち合わせをしておくこと

などが必要になります。

■監修・著
小林倫代(こばやし・みちよ)
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所名誉所員