Point
  • 知的障害の一般的な特徴と知的障害教育の基本的対応
  • 知的障害特別支援学級の対象
  • 知的障害特別支援学級の「特別の教育課程」と「生活単元学習」

特別支援学級は、障害種ごとの学級として編制されますが、ここではその中の一つである「知的障害特別支援学級」について、説明していきます。

知的障害の一般的な特徴と知的障害教育の基本的対応

知的障害とは、一般に、同年齢と比べて、

  • 物事の理解や推測、思考や判断、課題解決力の弱さがある
  • 言葉の理解や文字の読み書きなどの操作、実用処理上に関して全般的な弱さがある
  • 対人的面や意欲感情面においての幼さ、純朴さ、安易さがある
  • 運動面の遅れ・感覚や知覚面の鈍さ

といった特徴があり、特別な支援や配慮が必要とされる状態とされています。そして、その状態は、環境的・社会的条件で変わり得る可能性があるといわれています。


そして、知的障害として捉える要件には、

  1. 個別の知能検査によって年齢の平均より明らかに知的機能(認知能力や言語活用能力など)が低いこと
  2. 社会生活や学校生活を送る上で、常時あるいは一部支援を必要とする領域が複数あること(日常的・社会的適応の遅れ)
  3. 18歳以前に発症している発達期の障害であること

があり、特に、①の知的発達の程度と、②の適応状態の両面から知的障害の程度を考えます。

また、学習上の特性として、学習で学んだ知識や技能が断片的になりがちで、他の学習や日常生活で応用されにくいこと、成功経験が少ないことで主体的に活動に取り組む意欲が十分に育っていないことなどが挙げられます。
したがって、知的障害教育については、将来の生活に役立つことをその内容の中心に考え、実際性や具体性を重視した内容の指導を行うことが、対応の基本的な考え方となります。

参考:「障害のある子供の教育支援の手引」:文部科学省(2021)

知的障害特別支援学級の対象者

知的障害特別支援学級の対象となる児童生徒の障害の程度は、知的障害特別支援学校の対象となる児童生徒より軽度であるといえます。日常生活に必要な会話は可能ですが、抽象的で論理的な思考は難しいとされています。食事や衣服の着脱といった活動には一部支援が必要な児童生徒もいますが、おおむね支障がない程度となっています。
しかし、社会生活での適応に課題がある児童生徒も多く、対人関係や集団参加、感情をコントロールする場面では支援が必要になります。

参考:「障害のある子供の教育支援の手引」:文部科学省(2021)

知的障害特別支援学級の対象となる、障害の程度についての判断基準について、文部科学省(2021)の「障害のある子供の教育支援の手引」には、以下のように記されています。

知的障害特別支援学級の対象は,その年齢段階に標準的に要求される機能に比較して,他人との日常生活に使われる言葉を活用しての会話はほぼ可能であるが,抽象的な概念を使った会話などになると,その理解が困難な程度の者となる。

「障害のある子供の教育支援の手引」文部科学省(2021) より引用

知的障害がある児童生徒が、知的障害特別支援学級の対象になるかどうかは、個別の知能検査(例えば田中ビネー知能検査Ⅴ)による「知的発達の程度」と、観察や検査(例えばS-M社会生活能力検査第3版)による「日常生活の適応状態」を確認した上で、総合的に判断をしていきます。

特別の教育課程の編成

特別支援学級では、小・中学校の教育課程を基本に、特別の教育課程を編成することが認められていますが(参考:「特別支援学級とは?」)、知的障害特別支援学級における「特別の教育課程」の編成は、知的障害特別支援学校の教育課程を参考にする必要があります

なぜなら、知的障害特別支援学校の教育課程編成では、児童生徒の自立を目指すことを目標に、教育内容として生活に役立つことを中心とした、具体的で実際的な指導の形態「各教科等を合わせた指導」を取り入れているからです。

先述の通り、知的障害のある児童生徒は、学習で学んだ知識や技能が断片的になりがちで、他の学習や日常生活で応用されにくい、という学習上の特性があります。
ですから、知的障害特別支援学級において、特別の教育課程に「各教科等を合わせた指導」を取り入れ、日常生活に即した学習をすることによって、知的障害のある児童生徒が、体験的に知識を習得してくことができるのです。

「各教科等を合わせた指導」とは、教科と領域を必要に応じて組み合わせる指導の形態で、以下のようなものがあります。

生活単元学習

児童生徒が生活上の課題や問題を解決するために、一連の活動を組織的に体験することで、自立的な生活に必要な事柄を実際的・総合的に学習するもの。課題単元、行事単元、季節単元、偶発単元などを年間指導計画に位置付けて、各教科の内容をはじめ、道徳科や特別活動、自立活動の内容を組み合わせて指導を行う。

日常生活の指導

児童生徒の日常生活が充実し、高まるように日常生活の諸活動を適切に指導するもので、例えば、衣服の着脱、洗面、手洗い、排泄、食事、清潔など基本的生活習慣の内容や、あいさつ、言葉遣い、礼儀作法、時間を守ること、きまりを守ることなどの日常生活や社会生活において必要で基本的な内容を扱う。

作業学習

農耕や園芸、調理や清掃など、多様な作業活動を学習活動の中心にしながら、児童生徒の働く意欲を培い、将来の職業生活や社会自立に必要な事柄を総合的に学習する指導のこと。

なお、「各教科等を合わせた指導」として、上記以外に「遊びの指導」がありますが、知的障害特別支援学級では、取り入れている学級は少ないです。

生活単元学習

それでは、日常生活に即した「各教科等を合わせた指導」とはどのようなものでしょうか。ここでは、生活単元学習を例に、その具体的な内容について確認していきましょう。

下記の図は、筆者作成の仮想単元「たなばたまつりをしよう」での教科や領域の重なりを示したものです。

たなばたの読み聞かせや短冊へのお願いを通して、国語の聞く、話す、書くといった活動を、短冊を作り飾りつけをするなどでは図工の内容を、またお祭りの時間にはみんなでゲームを楽しむなど、自立活動では、ゲームのルールを守る、友達へ声援する、負けても泣かないなどといったコミュニケーションスキルの獲得などを盛り込んで単元の内容を構成しています。

このように、生活単元学習において、日常生活に即した実際的で具体的な学習をすることによって、知的障害のある児童生徒が、体験的に知識を習得していくことができるのです。

なお、生活単元学習においては、単元ごとに目標を立て、目標を達成するために指導計画を立案します。単元の時間数も、その内容においても異なり、教師がすべて立案していきますので、教師自身が単元の流れを掴んでおく必要があります。
と同時に、知的障害の児童生徒には見通しを持たせる必要もあります。したがって、「●●単元においては、こんな学習をするよ」といった単元帳(その単元の内容を網羅したノートのイメージ)を作ることによって、児童生徒は学習の見通しを持つことも可能になります。


以下は、筆者が学生指導で行った生活単元帳作りの一部です。筆者作成の知的障害特別支援学級の仮想事例と仮想単元例を基に、5人グループの学生が各時間を担当し、それを単元帳の一部として作成し、合算して「たなばたまつりをしよう」という生活単元帳にしていきます。

生活単元帳作成例①

生活単元帳作成例②

上記は学生の活動ではありますが、知的障害特別支援学級の担任になった際は、まず小さな単元を設定して単元帳を作成すると、指導計画も具体的に見えて取り掛かりやすくなると思います。ぜひ、実施してみてください。

通知表と指導要録

知的障害特別支援学級の通知表や指導要録においては、生活単元学習など各教科等を合わせた指導を行っている場合もあることから、知的障害特別支援学校の学習評価に準じて、具体的に定めた指導内容や実際の状況を文章で記述するようにします。記述においては、個人内評価という視点で児童生徒の努力や成果を認めることが大切です。

なお、知的障害特別支援学級での下学年の教科目標・内容を実施した際の評価については、当該学年の教科と同様に、資質能力の3要素において観点別学習状況で評価することになります。

■監修・著
廣瀬由美子(ひろせ・ゆみこ)
明星大学教育学部教授