Point
  • 特別支援学級の学習評価とは?
  • 適切な学習評価のための個別の指導計画
  • 通知表および指導要録の作成

「児童生徒にどういったカが身に付いたか」という学習の成果を的確に捉え、教師が指導の改善を図るとともに、児童生徒自身が自らの学習を振り返って次の学習に向かうことができるようにするために、適切な学習評価をしていくことは重要です。
これは、障害の有無とは関係のないもので、特別支援教育でも変わらず重要なことになります。

中央教育審議会(2019)「児童生徒の学習評価の在り方(報告)」では、障害のある児童生徒の学習評価において以下のような記述があります。

児童生徒一人一人の学習状況を適切に把握することは、新学習指導要領で目指す資質・能力を育成する観点からも重要であり、障害のある児童生徒、日本語指導を必要とする児童生徒や不登校の児童生徒、特別な配慮を必要とする児童生徒に対する指導についても、個々の児童生徒の状況に応じた評価方法の工夫改善を通じて、各教科等の目標や内容に応じた学習状況を適切に把握し、指導や学習の改善に生かしていくことを基本に、それぞれの実態に応じた対応が求められる。(注:下線は筆者)

特別支援学級の学習評価 = 個別の指導計画の評価

学習評価における観点(内容)は、特別支援学級だからといって変わるものではありません

学習指導要領(平成29年告示)で示された、資質・能力の3つの柱(「何を理解しているか、何ができるか」「理解していること・できることをどう使うか」「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」)に基づいて、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点別の学習状況の評価が基本となります。

ただし、特別支援学級では、在籍児童生徒全員に対し、各教科や領域など個別の指導目標や指導内容、指導方法を個別の指導計画として作成しているので、それを基に学期ごとの学習評価を行います。

ですから、特別支援学級における学習評価は、個別の指導計画の評価といっても過言ではありません。そして、その評価は、児童生徒の学習評価であると同時に、特別支援学級の担任が、指導や授業改善を行う際の評価にもなります。

指導目標の記述

学習評価を適切なものにするためには、各児童生徒が指導目標に対し到達できたのか否か、どのような実現状況であったかなどを客観的に示す評価基準(評価規準ではない)が必要になります。
そのためにも、個別の指導計画の指導目標は、具体的な評価基準を記述しておくと、観察や記録が焦点化されるので適切な学習評価につながります

◇評価規準と評価基準について

(評価規準)
評価の観点によって示された子どもにつけたい力を、より具体的な子どもの成長の姿として文章表記したもの。

(評価基準)
評価規準で示されたつけたい力の習得状況の程度を明示するための指標を、数値(1・2・3)、記号(A・B・C)、または文章表記で示したもの。

例えば、「国語で習った漢字を使うことができる」という目標よりは、「国語で習った漢字を作文の中で使うことができる」という目標の方が焦点化され、評価も作文の既習漢字に限定してできます。
その際の評価基準例は、「A:既習漢字の70%を使用している、B:既習漢字の50%を使用している」といった具体的な評価基準の数値を入れておくとより明確になります。
指導目標の記述が曖昧で抽象的であればあるほど、在籍児童生徒の学習成果が不明確になり、第三者には目標への到達の度合がわかりにくいものになります。

以下は、茨城県教育研修センター特別支援教育課(2019)による「特別支援学級スタート応援ブック 学級経営編」での個別の指導計画例となります。

この例において、短期目標例に「できた、できないで評価できる具体的な目に見える行動目標に」といった記述があります。
また、総合評価においては、「目標の達成状況や、手立ての有効性などの評価、複数の教師の意見も取り入れて、来期の個別の指導計画の資料として活用」などとあります。

特別支援学級に在籍する児童生徒の評価では、できないことや課題の方に目が向きがちです。ですが、障害のある児童生徒だからこそ、できるようになったこと、改善できたことを適切に評価していくことで、児童生徒の学習意欲につながることを意識してください

児童生徒が学習したことの意義や価値を実感できるようになるためにも、一人ひとりの実態をよく把握し、良い点や改善状況を積極的に評価していくことが大切です。

通知表及び指導要録の作成

通知表は、各学校が学期ごとや年度末に児童生徒の学習を通しての成長と学校生活の状況を保護者や本人に連絡する文書です。
通知表は各学校において作成されるものですが、特別支援学級の場合、各学級の教育課程に基づいて学級独自の様式を定める場合や、通常学級の様式を使用しながら、評定を文章表記にするなど一部を変えて使用する場合があります

特別支援学級の通知表においては、指導要録の「指導に関する記録」欄の記述内容を盛り込むなどして、数値的な評価と記述的評価を適宜組み合わせることも必要です。具体的な記載に関しては、各自治体のHPに掲載されていることが多いので、そちらを確認すると良いでしょう。

指導要録は、児童生徒の学籍並びに指導の過程及び結果の要約を記録し、指導及び外部に対する証明などに役立たせる原簿としての性格を持っています。様式は各学校の設置者(※自治体)が定めますが、記入上の注意などは設置者から各学校に指示されるものです。

学校の設置者である県、市区町村の教育委員会において、特別支援学級用の指導要録の様式を定めている場合は、これに沿って記載し、特別な定めがない場合は、通常の学級と同様の様式を使用して記載するようにします。

なお、文部科学省の通知によれば、特別支援学級の通知表と指導要録の作成は、以下のように条件を満たせば、同一の様式とすることもできます。

域内の学校が定めるいわゆる通知表の記載事項が,当該学校の設置者が様式を定める指導要録の「指導に関する記録」に記載する事項を全て満たす場合には,設置者の判断により,指導要録の様式を通知表の様式と共通のものとすることが現行の制度上も可能であること。その際,例えば次のような工夫が考えられるが,様式を共通のものとする際には,指導要録と通知表のそれぞれの役割を踏まえることも重要であること。

  • 通知表に,学期ごとの学習評価の結果の記録に加え,年度末の評価結果を追記することとすること。
  • 通知表の文章記述の評価について,指導要録と同様に,学期ごとにではなく年間を通じた学習状況をまとめて記載することとすること。
  • 指導要録の「指導に関する記録」の様式を,通知表と同様に学年ごとに記録する様式とすること。

(注:下線は筆者)

「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」
文部科学省(2019)

最後に、知的障害特別支援学級の通知表と指導要録の作成において説明しておきます。

知的障害特別支援学級においては、生活単元学習など各教科等を合わせた指導を行っている場合もあることから、知的障害特別支援学校の学習評価に準じて、具体的に定めた指導内容や実際の状況を文章で記述するようにします。記述においては、個人内評価という視点で児童生徒の努力や成果を認めることが大切です。

なお、知的障害特別支援学級での下学年の教科目標・内容を実施した際の評価については、当該学年の教科と同様に、資質能力の3要素において観点別学習状況で評価することになります。

■監修・著
廣瀬由美子(ひろせ・ゆみこ)
元 明星大学教育学部教授