Point
  • 保護者との連携について
  • 保護者との連携で心がけるポイント
  • 連携の具体的な方法について

保護者との連携

通級による指導を受けている児童生徒やその保護者の思いは、様々です。通級による指導においては、児童生徒の困難さやその要因と考えられる障害の特性、そして、児童生徒や保護者の「こうしたい」という願いを理解し、寄り添いながら、一人ひとりに合わせて、どのような指導や支援をするかについて合意形成をしておくことが大切です。

そのため、連絡ノートなどを活用し、通級による指導の担当教員と在籍学級の担任、そして保護者とが児童生徒子どもの情報(課題)を共有し、指導の方向性を確認していくことが大事になります。
学校での様子を保護者に伝え、家庭でも様々な配慮を保護者にしてもらうことで、子どもに対する包括的な支援を行うことができるようになります。


このように、通級による指導においては、保護者との連携がとても重要になってきます。そして、保護者との連携を適切に行う上で、担当教員としてすべきことは、情報共有と信頼関係の構築になります。

通級による指導を始める前に

通級による指導を開始する前に、我が子に対する保護者の願いや、生育歴、相談歴、家族の状況など、児童生徒に関する様々な情報を保護者から収集するようにしましょう


保護者は我が子が幼いころから、養育に悩んだり、我が子の課題をしつけの問題として指摘されたり、不安や辛い経験を重ねていることがあります。保護者自身が相談できる人や場所がなく、孤立している場合もあるかもしれません。
そのため、通級による指導の担当教員は、保護者の良き聞き手になり信頼関係を作り、保護者の悩みに沿う形で、通級による指導がどのような役割を果たせるのかを伝えることが大切です

また、通級による指導の制度や指導内容について十分に理解していないという保護者もいるのではないかと思われます。通級による指導になじみのない保護者に対しては、通級指導教室はどのような教室で、どのような指導を行う場所なのか、について、丁寧に説明することも大事です。
そして、指導の課題や内容と手立て、どの程度まで児童生徒の困難さが解決したら通級による指導を終了するのか、などについても保護者と共通理解を図っておきます。

通常の学級で学んでいる我が子の(学習上又は生活上の)困難さについて、保護者が把握している事柄を聞くことも大切です。それは、在籍学級の担任が捉えている子どもの実態と、保護者の捉え方が異なる場合があるからです。


もし、在籍学級の担任と保護者の捉え方が異なる場合には、通級による指導の担当教員は、在籍学級の担任と保護者との間に入り、「児童生徒の成長に向けて取り組んでいる」という方向性を確認しながら、互いに協働し合えるようにコーディネートしていくことが大切です。

児童生徒の様子の共有

通級による指導の経過や通級による指導を受けているときの児童生徒の様子などについては、定期的に保護者と共有することが大切です。
ここでは、保護者との情報共有について、具体的な方法を紹介します。これらをすべて実践することは難しいかもしれませんが、自分に合った方法でできることから取り入れてみてください。

連絡ノートなどの活用

連絡ノートや指導ファイルなどに、具体的な指導・支援の内容や手立てなど、指導した際の児童生徒の様子を書き込み、保護者に伝えるようにします。指導内容などが分かると、保護者は安心し、担当者への信頼感も得やすくなります。
指導したことを家庭でも参考にして行ったり、児童生徒が頑張っている様子を褒めたりするように促すことも大事です。こうすることで、保護者は我が子に対応しやすくなり、気持ちにゆとりをもって向き合えるようになります。

送迎のときに

他校通級の場合は、保護者が送迎することが多いです。指導終了後に児童生徒の様子を伝える時間を設け、保護者からも頑張りを褒めてあげるように依頼します。また、家庭生活の中での配慮点などについて、助言することもできます。

個人懇談

在籍学級の日程に合わせて通級による指導の個人懇談を行うと、保護者の負担が軽減できます。懇談は、在籍学級の担任と三者で行う場合と、保護者と通級による指導の担当教員の二者で行う場合が考えられます。

例えば、言語に関する通級による指導を受けている児童生徒が、病院や療育機関において言語聴覚士の指導を受けている場合があります。このような場合、個人懇談において、児童生徒が関わっている機関の情報を確認することも大事です。
児童生徒が関わっている機関は、病院、放課後デイサービス、習い事など、様々です。通級による指導が児童生徒の生活の中で生かされるよう、そして、関わっている機関との連携がとれるよう心がけることも大切です。

保護者会の開催

通級による指導を受けている児童生徒の保護者を対象に、保護者会を設けている教室もあります。通級指導教室の運営に関して報告したり、学習会・講演会を行ったり、茶話会で保護者間の交流を深めたり、情報交換を行ったりします。先輩の保護者の子育ての経験や話を聞いたりすることで、子育てに見通しをもつことができます。

教室だよりの発行

教室だよりを発行し、在籍学級訪問などの通級による指導の予定、諸行事のお知らせ、児童生徒に対する効果的な関わり方、保護者への連絡事項、教育や福祉の情報などを発信します。

指導報告書

学期末に通知表と一緒に、通級による指導の様子を文書で保護者に伝える教室もあります。その際には、指導の成果を中心に記述するようにします。

通級による指導の終了時には

指導開始時の困難さが改善、軽減され、通級による指導の終了が見込まれた場合には、面談などで保護者に伝え、保護者や在籍校間での合意形成の上で、指導を終了します。その際には、当該児童生徒の学校・家庭で見られる行動の変化を確認したり、終了の手続きなどを説明したりします。


通級による指導が終了することは、保護者にとって、我が子の成長を確認できて嬉しい反面、これから大丈夫だろうか、と不安にもなります。保護者の心情や考えを丁寧に聞き取り、終了後の在籍学級における支援の内容についても共通理解を図ります。

■監修・著
小林倫代(こばやし・みちよ)
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所名誉所員