- Pointこの記事のポイント
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- 通常学級の担任との連携は、日々の積み重ねが大事
- 専門家と連携して必要な情報・経験を得る
- 一人に対する指導の経験が他の子どもの指導にも応用できる
通常学級の担任との連携
特別支援学級において求められていることの一つに、交流及び共同学習の推進があります。
特別支援学級の担任は、この交流及び共同学習を推進するために、特に教育課程を編成する際は通常学級の担任との連携が必須となります。もちろん、日々の指導においても連携は重要となります。
小学校学習指導要領(平成29年告示)総則において、「第4 児童の発達支援」の「2 特別な配慮を必要とする児童への指導」「(1)障害のある児童などへの指導(中学校も同様)」には、以下のような記述があります。
ア 障害のある児童などについては,特別支援学校等の助言又は援助を活用しつつ,個々の児童の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うものとする。
小学校学習指導要領(平成29年告示)総則第4 「児童の発達の支援」2「特別の配慮を必要とする児童への指導」
(1)「障害のある児童などへの指導」より引用
この記述の重要な点の一つは、「個々の児童の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行う」とあることです。
特別支援学級の児童生徒が交流及び共同学習を行う際は、特別支援学級の担任と通常学級の担任の連携が求められます。
なぜなら、特別支援学級の担任は、交流及び共同学習の時間に在籍児童生徒が困っていることや、通常学級の担任や他の児童生徒が課題と感じていることなどを探り、その課題を特別支援学級での指導に生かす必要があるからです。
特別支援学級の担任が通常学級の担任と連携する際は、いつ、どこで、どのような情報を得るのかが大切です。
そのために、観察連携シートや個別の指導計画などの連携のツール(道具)を準備しましょう。その際には、具体的なツールの作成などを通常学級の担任と相談して継続可能な方法にするなど、無理のない範囲で情報を得ることが鉄則となります。
もちろん、放課後などの教師間での会話も重要ですが、その内容を記録として残すためには、やはり簡易なツールを作成し、日々の情報を積み重ねることが大切になります。
では、具体的な連携ツール例(連絡カード)を紹介していきます。
上段の枠内には通常学級の担任が、特別支援学級在籍者の通常の学級での様子(交流及び共同学習の時間など)や、特別支援学級の担任から欲しいアドバイスなどを記述します。
下段は、特別支援学級の担任が通常学級の担任からの記述内容に対し、特別支援学級での様子や、欲しいアドバイスに対する回答を可能な範囲で記述します。
1週間に1回程度のやり取りですが、1年間といった長期的なスパンで考えますと、多くの情報を得ることができるようになります。
専門家との連携
次に専門家との連携例を紹介します。
先の学習指導要領総則にも「・・・・・・特別支援学校等の助言又は援助を活用しつつ・・・・・・」とあるように、特別支援学校や大学、医療機関などの専門家と連携して、必要な情報を得ることは特別支援学級での指導において重要です。
以下の写真は、特別支援学級の担任と共に、筆者が専門家として作成したオーダーメイドマニュアルです。
特別支援学級に在籍しているある児童が、交流及び共同学習において通常学級で学ぶ際に、通常学級の担任に必要な情報を得てもらうために作成したものです。項目の内容は、その児童の登校から下校までの1日の様子であり、それをQ&A形式で記入しています。
下図は、「Q4 休み時間の配慮は?」といった項目に対し、アンサーとなる具体的な内容を記述しています。
このときの筆者の専門家としての役割は、特別支援学級の担任が在籍児童に対して多面的な実態把握を行うためにオーダーメイドマニュアルの作成を提案し、マニュアルの項目に何が必要か一緒に検討すること、その項目に従って特別支援学級の担任が記録を重ねた上でそれらの情報を交流及び共同学習の際に通常学級の担任に提供するといった、副次的で階層的な視点で協働することでした(実際は筆者の研究の一環として実施)。
研究の視点はあったものの、結果として特別支援学級の担任が観察・記録の視点を得たことで日々の観察眼を磨くことができ、記録を重ねる中で多面的な視点から対象者を理解することができました。さらにマニュアルを作成する過程で、通常学級の担任への支援を行うといったモチベーションが高まり、この児童のマニュアルも年次ごとに更新していくことが可能になったという事例です。
一人に対する指導の経験が他の子どもの指導にも応用できる
近年の学校現場は教員の労働環境が激務といわれており、特別支援学級の担任も同様かと思います。
しかし、筆者自身も特別支援学級の担任だった際、複数在籍する児童生徒の指導で、「今年度は〇〇さんを重点的に指導し記録を取ろう」、「次年度は△△さんの指導と結果を記録しよう」といった具合に、できることを一つずつ行った結果、その経験を他の子どもの指導に応用して生かすことが可能でした。
最初から完璧な指導は難しいですし、連携に至っても同じですが、できる範囲で工夫することは長い目で見ると重要だと思っています。
■監修・著
廣瀬由美子(ひろせ・ゆみこ)
元 明星大学教育学部教授