Point
  • 特別支援学級の特別の教育課程編成の考え方
  • 特別支援学校の教育課程を参考にする
  • 知的障害の有無によって教育課程が異なる
  • 自立活動を実施する

特別支援学級の特別の教育課程編成の考え方

特別支援学級における教育課程編成の考え方は、文部科学省(2017)の「小学校学習指導要領(平成29年告示)総則」に以下の記述が示されています(中学校も同様)。

イ 特別支援学級において実施する特別の教育課程については,次のとおり編成するものとする。
(ア)障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るため,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章に示す自立活動を取り入れること。
(イ)児童の障害の程度や学級の実態等を考慮の上,各教科の目標や内容を下学年の教科の目標や内容に替えたり,各教科を,知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりするなどして,実態に応じた教育課程を編成すること。
(注:マーカーは筆者)

小学校学習指導要領(平成29年告示)総則より引用

上記のように、特別支援学級における教育課程の編成については、「特別支援学校小学部・中学部学習指導要領第7章に示す自立活動を取り入れる」こと、また「知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりする」ことなどが求められます。

つまり、特別支援学級の教育課程を編成するためには、小中学校の学習指導要領を基本としつつ、①特別支援学校の学習指導要領における自立活動を取り入れること、②知的障害特別支援学級では、知的障害のある児童生徒を対象にした特別支援学校(以下知的障害特別支援学校)の教育課程編成を行うことの必要があります。

特別支援学級の担任になると、小中学校の学習指導要領はもちろんのこと、特別支援学校の学習指導要領(特に総則編、自立活動編)を理解しておくことも重要ということです。

特別支援学校の教育課程の編成

特別支援学級の教育課程編成を正しく理解するために、まずは5障害種の特別支援学校の教育課程編成の概要について説明します。

なお、特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者、病弱・身体虚弱者を対象にしていますが(複数の障害が重複している重複障害者も該当)、在籍する児童生徒は、特別支援学級の対象者より障害の程度が重いケースということを念頭に置いておきましょう。

以下の図は、特別支援学校の教育課程を編成する際の特徴をまとめたものです。

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総授業時数は、原則、小中学校の各学年と同じ時間で編成します。

しかし、知的障害のない児童生徒を対象にした特別支援学校では、教育目標や内容は小中学校に準じて行い(原則は同じという意味)、自立活動という領域を実施することで教育課程を編成します。もちろん、実際の各教科の目標や内容においては、障害特性を踏まえたものになりますが、基本的な教育課程の編成は小中学校の学習指導要領に準じたものになります。

一方、知的障害特別支援学校では、学習指導要領において知的障害の特性を踏まえた独自の教育目標と内容が設定され、教育課程を編成する際は、教科別の指導各教科等を合わせた指導領域別の指導と、指導の形態も異なっています。

また、教科においては、小学部6教科、中学部は教科というように、小中学校で行う教科とは目標も内容も異なっています。ちなみに、教科書は、文部科学省著作教科書である☆本(ほしぼん)といわれるものを使用します。☆本は、小学部は☆つ~☆つ、中学部は☆4つ~☆5つとなります。なお、☆本の教科書は、国語、算数・数学、音楽の教科となっています。

以上、特別支援学校の教育課程編成の概要を説明しました。

特別支援学級の教育課程の編成

特別支援学級において特別の教育課程を編成する際も、知的障害のない単一障害の特別支援学級と、知的障害特別支援学級では、特別の教育課程の編成の考え方が異なります。

知的障害のない単一障害の特別支援学級では、小中学校の当該学年の教育目標と内容に準じながら、自立活動を取り入れることになります。

自立活動は、特別支援学級では必須の指導であるため、小集団指導や個別指導などを実施します。

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また、知的障害のない単一障害の特別支援学級では、自立活動の時間における指導以外の、特別支援学級で行う教科指導の中でも自立活動の内容を踏まえて指導を行います。

交流及び共同学習では、在籍児童の学年や実態等を考慮して、通常の学級担任と共に交流する教科や領域(総合的な学習の時間や特別活動、外国語活動)を検討し、連携を図りながら、可能な範囲で通常の学級担任に配慮をしてもらうなどします。

一方、知的障害特別支援学級においては、知的障害のある児童生徒が在籍していることから、特別支援学校の教育課程を参考にし、各教科の指導では下学年の目標と内容を取り入れる、あるいは各教科等を合わせた指導として生活単元学習などを取り入れて教育課程を編成することになります。詳しくは、本サイト「知的障害特別支援学級」を参照してください。


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自立活動を実施すること

ここまで、特別支援学級における特別の教育課程編成について述べてきましたが、知的障害の有無によって学級として編成する教育課程は異なることについて説明してきました。

ここでは、特別の教育課程編成の重要な視点として、知的障害の有無にかかわらず自立活動を実施することについて説明します。

自立活動については、本サイトの「自立活動」においても説明していますが、特別支援学校学習指導要領の総則においては、以下のような内容が述べられています。

自立活動の指導は、

①学校の教育活動全体を通じて適切に行う。

②自立活動の時間における指導は、各教科等と密接な関連を保って行う。

③個々の幼児児童生徒の障害の程度や発達の段階等を的確に把握して、適切な指導計画の下に行うよう配慮する。

上記の①~③は、道徳科と比較して考えると理解しやすくなります。


①学校の教育活動全体を通じて適切に行う。

自立活動は、学校生活の中で機会を捉え適宜指導を行うということです。これは、先生方が道徳の指導を行っている経験から、その考え方や指導については理解しやすいかと思います。


②自立活動の時間における指導は、各教科等と密接な関連を保って行う。

道徳と同様に、自立活動という指導は学校生活全体を通して行うだけではなく、個々の児童生徒の障害特性を踏まえた指導を行うことから、「時間における指導(特設する時間)」を行います。

したがって、特設する「時間における指導」においても、各教科等の目標や内容と密接に関連することになります。


③個々の幼児児童生徒の障害の程度や発達の段階等を的確に把握して、適切な指導計画の下に行うよう配慮する。

道徳においても、年間指導計画や単元計画などがあると思います。自立活動においては、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服することが目標ですから、一人ひとりに個別の指導計画で自立活動の計画を作成します。


特別支援学級を初めて担任する先生方の戸惑いは、この自立活動の実施にあると思われます。

通常教育にない領域であることから、何をどうやって指導したら良いか不安になるかと思います。

詳しくは、本サイトの「自立活動」「自立活動の具体的な指導例」を参照してください。


そして、とりあえず最初に、①時間における指導を週時程表に特設し②在籍児童生徒全体に共通する学習上又は生活上の困難さを想定し、③特設した時間で自立活動の指導を行ってみてください。

指導を行う際は、自立活動の内容区分27項目の要素(内容)を選び出し④実際の指導目標と指導内容を考えることをお勧めします。

参考

  • 菅原眞弓・廣瀬由美子 特別支援学級をはじめて担任する先生のための<自立活動>授業づくり 明治図書 2021年

■監修・著

廣瀬由美子(ひろせ・ゆみこ)
元 明星大学教育学部教授